ボイラーの排ガスにはNOx(NO、NO2)が含まれます。これらをゼロにすることは不可能ですが、極力排出量を低くし、大防法による規制をクリアする必要があります。そのため、この記事では排ガスに含まれるNOxをどうやったら抑えられるかについて考えてみます。
なぜNOxが発生するか
まず、なぜNOxが発生するかということですが、これは空気や燃料に窒素やその化合物が含まれることが原因です。窒素やその化合物は高温環境下で酸化されるため、燃料を燃やしてボイラーの運転をする以上はNOxの発生自体を防ぐことはできません。
また、燃焼により発生するNOxには、燃焼に使用された空気中の窒素が高温条件下で酸素と反応して生成するサーマルNOxと、燃料中の窒素化合物から酸化して発生するフューエルNOxの2種類があります。
NOxの排出抑制方法について、以降紹介します。
燃料転換
燃料中の窒素分の一部は燃焼によって酸化されてフューエルNOxに変換されるため、窒素分の少ない良質燃料への転換は有効なNOx低減対策です。また、一般的に硫黄分の少ない燃料は、窒素分も少ないです。そのため、低硫黄対策として推進されてきた低硫黄燃料への転換はフューエルNOxの低減にも役立ちます。
気体燃料は燃焼用空気との良好な混合が得られるため燃焼が迅速に進み比較的火炎温度は均一となり、局部高温域の出現も少なく、NOxの発生は少なくなります。また、混合特性が良いために空気比を低くし、酸素濃度を低く保つことができます。
液体燃料の場合は、噴霧される際の油滴径の大きさによって火炎の長さや温度分布が異なります。油滴径の大きい重質油では、均一な混合が難しいために局部高温域の出現が多く、また混合特性も気体燃料に比べ劣るため、空気比は気体燃料よりも多くなります。
燃焼方法改善
燃焼方法の改善には、燃焼温度を低くする、高温燃焼域における燃焼ガスの滞留時間を短くする等の手法があります。それぞれについて、下記で紹介します。
・二段燃焼法
二段燃焼法は、燃焼を第一段と第二段に分けて行うことでNOxの生成を抑制する手法です。第一段階では供給する空気量を理論空気量の80~90%程度に制限し、第二段階で不足の空気を補って供給し、径全体で完全燃焼させます。これは、急激な燃焼反応を抑制して火炎温度の上昇を防ぐとともに、酸素濃度の低下によってNOx生成を抑制します。この方法はサーマルNOxとフューエルNOx両方の低減に効果があります。
・排ガス混合法
燃焼空気に排ガスの一部を混合して空気中の酸素濃度を減らし、燃焼ガスの温度を下げることでNOx生成を抑制します。排ガスで薄められた空気は、通常の空気に比べて酸素濃度が低いため、燃焼速度が下がります。これにより火炎の最高温度を低下させ、NOx生成を抑制します。この方法は、サーマルNOxに効果はありますが、フューエルNOxにはほとんど効果がありません。
・濃淡燃焼
複数のバーナーを、燃料過剰域で燃焼させるものと、空気過剰域で燃焼させるものに分けることにより、2段燃焼と同様な効果が得られます。燃料過剰の部分では酸素濃度の低下によるNOx低減が図られ、空気過剰の部分においては、過剰空気による急速な冷却が図られて、NOx低減を行います。
この方法では、複数のバーナーを持つ施設にしか適用できないこと、火炎が長炎となること、さらに負荷変動の大きい施設については燃焼管理が複雑化するため困難であることなどが問題点として挙げられます。
・低NOxバーナー
低NOxバーナーは、酸素濃度の低減、火炎最高温度の低下、高温域でのガスの滞留時間の短縮等のNOx低減方法の一つあるいは幾つかの組み合わせをバーナーに取り入れることによってNOx低減を行うものです
低NOxバーナーである、リジェネレイティブバーナーについて紹介した記事もありますのでよろしければ是非。
脱硝装置の設置
排煙脱硝装置により、ボイラーからのNOxを含んだガス中に還元剤としてアンモニアを注入し、触媒層を通して窒素と水に分解します
発生したNOxを排ガスから除去する方法については、アンモニアで還元する以外の方法も、以下の記事で概要を紹介していますので、併せて見ていただけると、より体系的にNOxに関して知識を得ることができます。
最後に
NOxの低減方法についてまとめてみました。一言でNOxを抑える、といっても結構種類があって奥深いですね。
ご安全に!
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