先日、業務中に技術スタッフとして想定訓練を行いました。これは自分が知っている限り課内で初めての取り組みで、非常に有意義だったので記事にしたいと思います。
普段どんな仕事をしているのかは以下の記事にありますのでよろしければ併せて読んで頂けると嬉しいです。
訓練の背景
現在、プラントの自動化等の技術の向上、各現場での様々な取り組みによりトラブルの数は減っています。そのため、技術スタッフ、特に自分のような若手スタッフにはトラブル対応の経験が不足しがちです。しかし、長いこと生産現場でエンジニアや職制として働いていれば重大なトラブルには必ずぶち当たります。(今年度は系列停止、一部の工程停止が何度かありました。)トラブルが発生した時には、トラブルに起因するアラーム、運転員からの報告、他部署からの連絡、自部署から他部署への連絡等々、秒単位で情報の波が現場を襲ってきます。そんなとき、冷静に、素早く、正確に状況を把握して判断、指示を出すというのは初めてでは絶対にできません。というわけで、せめてトラブルを想定した訓練をしておけばいくらかマシになるだろうというのが訓練の背景です。
訓練の方法
まずは、訓練時の指揮系統を図に示します。上位者から順に右へ向かって並べました。訓練対象者が真ん中の技術スタッフです。細かい構成や呼称は会社によって違うとは思いますが、職制、スタッフ、運転員という課内の構成はどこもあまり変わらないのではないでしょうか。
トラブル時、技術スタッフの役目は運転員である主任や班員から正確に情報を引き出すこと、それを元に運転の方針を考え指示を出すこと、そして職制である課長代理と課長へ報告することです。より詳細な運転操作は状況を見ながら主任が班員に指示を出して進めます。(状況次第ではスタッフと主任の判断により運転操作について指示をして、職制には事後報告になりますが。)
以下、訓練の要領になります。想定トラブルが発生した、という連絡を運転員役の人から受けた時点で訓練スタートです。トラブルによる運転変動が落ち着くか、訓練対象者がギブアップした時点で訓練は終了で、訓練対象者の平均で大体10~15分くらいで終了したとのこと。フィードバックや質疑応答の時間を入れると大体40分くらいで全て終了します。
- 参加者は職制、訓練対象者、技術スタッフ役、運転班の主任役
- 想定トラブルの内容や状況(平日or土日、昼間or夜間)は訓練開始時に説明される
- トラブル発生時、誰が出勤orテレワークなのかは訓練対象者が決めてよい
- 訓練対象者はプラントの詳細フローを見ながら指示を出してもよい
- トラブル発生時のプラントの運転状況は訓練対象者が想定し、それを元に訓練を実施する
- 訓練対象者からの報告、依頼について職制と主任は了解、しか返さない(間違えた判断、指示をしていてもそのまま訓練は継続される、訓練に関するアドバイスはしない)
- 訓練終了後、出席者からのフィードバック、模範解答の解説、質疑応答
職制や主任のリアクションは、訓練を重ねたり訓練対象者によって変える予定らしいです。あえて意地悪な指示や質問をしたりしようと考え中だとか。
訓練の感想
一言でまとめると、非常に有意義でした。その理由、訓練を振り返って感じたことを紹介します。
1.普段からトラブル時の対応を考えていても、いざ訓練をしてみれば全てを活かすことはできない
プラントの運転管理者として、自部署の過去トラブルや、他部署・他社の事例を聞いたときに頭の中では自分だったらどうするか、自分のプラントだったらどんな指示を出すか、といったことを普段から考えてはいます。しかし、いざ訓練を実施して振り返ってみれば、集めるべき情報、職制へ伝えるべき情報に抜けが生じていました。経験がある程度解決するとは思いますが、訓練でも抜けが出る以上、実際にトラブルが発生した場合、情報が錯綜し、かつ動揺している時に100%完璧な対応を自分一人でとるのはかなり難しい、と実感しました。
2.自分の指示を元に事態が進んでいく臨場感は頭の中での訓練では感じられない
これは複数人が訓練のために時間をとっているから出来ることですね。頭の中で対応を順番に考えているのと、実際に指示を出して他人が動いているのを見ながら、その場で出てくる情報を元に対応を考えるのとではリアル感が全く違います。そして指示を出して動き始めたら引き返せません。訓練といえども、緊張感は自分一人で対応を考えているときとは比べ物になりませんでした。文章にすると誰がどう考えても当たり前の話ですが。
3.訓練を通して新たに気づきが出てくる
訓練中、このタイミングでこんな指示をしたらどうなっていたか?こういったケースだったらどうすべきか?といった、トラブルが発生しないと考えが及ばないような内容、普段運転が安定している時には気にしていない様々なことが訓練を通して気になるようになります。質疑応答の時間である程度解消できますが、気持ちが落ち着いてから改めて振り返ると、より色々な疑問が出てきます。それをわかりそうな人に聞いたり自分で調べることで、よりプラントの理解が深まったり(インターロックの作動条件、機器の設計条件、それらの設定根拠等)、誰にどんな情報をどのタイミングで出すべきなのか明確にすることができます。「普段の業務で利用しており、知識として頭に入っている」のと、「非常時でも自分の判断根拠として咄嗟に利用できる」とではレベルが全く違います。
最後に
振り返りつつ記事を書きましたが、非常に有意義な訓練でした。運転員主体の訓練にも参加していますが、そこでは自分が指示を出すことは特になかったので、今回は自分主体での初めての訓練でした。普段考えないことを色々考えるいいきっかけになりました。参考になれば嬉しいです。
ご安全に!
コメント