今回は久しぶりに高圧ガス関係のネタになります。今回はタイトルにもある、火が出てる例のアレです!ちなみに、こいつの名前はフレアスタックといいいます。
概要
石油を精製する製油所などの生産・処理プラントでは原油を熱分解してガソリンや軽油を作る際にメタンなどの炭化水素ガスが発生します。しかし、これらのような余剰ガスはそのまま大気中に放散すると、臭いも強く環境汚染につながります。特に硫化水素のような有毒ガスを含むこともあり危険なため、生産・処理施設から十分安全な距離に設置したフレアスタックに導き、煙突の先で燃やすことである程度無害化しています。フレアスタックが高い塔なのは、燃焼ガスを大気中に十分拡散させるためです。ガス量の多少にかかわらず、常時燃焼を続けており、ガス供給が一時的に止まってもパイロットが着火しており、燃焼が中断しないようになっています。
ポイント
とりあえずプロセスのフロー貼っておきますね。
1. 燃焼炎の安定性
フレアスタックの燃焼機構は拡散式バーナーと同じです。ガス流速がガス固有の燃焼速度に対して過剰になると炎が消え、逆に流速が燃焼速度を大きく下回ると空気が燃焼筒内に逆流混合する逆火現象が起きます。安定燃焼のため、噴出ガス流速が燃焼速度よりも大きく、かつガス流速と音速との比(マッハ数)が0.2程度になるよう設計することが推奨されています。
2. 黒煙発生の防止
一般に炭化水素が燃焼すると、火炎の中に存在する白熱した炭素粒子のために輝度の大きな炎となるが、重質な炭化水素を燃やす場合や、空気が少ない場合は炭素粒子が炎から放出され黒煙となります。黒煙発生防止のためには次のような方法があります。一般的なのは(2)です。
(1) 予混合バーナーを使う
(2)スチームの吹込みを行う
(3) 小バーナーを多数使用する
蒸気を吹き込むことで、空気が吸引されるため、空気の混合比率を上げて燃焼効率を向上させるとともに、水性ガスシフト反応を利用して黒煙防止を図っています。
3. 騒音の防止
上記のように、フレアスタックではスチームを吹き込んでいますが、その際に高周波の騒音が発生します。通常はスチームを吹き込むノズルにマフラを付けて騒音防止を図っています。
一方、低周波の騒音も問題になることがあります。これは脈動燃焼という現象によるもので、ガスシールドラム内のシールヘッドの形状不良や吹込みスチームの過多により火炎が息継ぎを起こし低周波の騒音(振動)を発生させるものです。防止法としてはシールヘッドの形状を変えるかスチームの量を調節するといったものがあります。最近ではガス流量に合ったスチームの量を自動的に調節するシステムも登場してきています。
4. 放射熱(試験ではあまり出てない)
フレアスタックは、最大処理時(主にトラブルによるプラント緊急停止、定修前後のプラント停止・立ち上げ時)においても周辺設備や人体に熱による損傷を与えないよう設計する必要があります。高圧ガスのコンビ則例示基準では、人体に対する許容放射熱量は4.65kW/m2とされており、地上でこれを超える放射熱を受ける部分については立ち入り禁止の措置を取る必要があります。
余談
ルールとして、担当しているプラントからフレアへプロセスガスを流すときには事前にフレアスタックを管理している部署や、対外的な調整をしている部署へ連絡しています。これは、フレアスタックの急な運転変動を防ぐ、火炎が急にでかくなったり黒煙がボンボン出るのを防ぐという意味があります。また、火炎が大きくなったり黒煙がでると近隣の方から問い合わせがあるらしいので調整部署に事前に知っておいてもらう必要があります。(定修時のフレアスタックはとんでもなく火炎も音も大きくなり遠くからみると大火事のように見えます。そのため、近隣の方には定修関係でフレアの火炎が大きくなるタイミングが知らされているはず。)
フレアスタックの炎が大きくなるタイミングは突発以外では定修シーズンと決まっているので、撮影したい方は工場関係者から定修はいつか聞いてみたり、自治体のサイトを見るといいかもしれません。
最後に
たまにトラブルなのか近隣の工場のフレアが大きくなることがあって、そんなときは少し魅入ってしまいます。火っていいですよね。ちゃんと制御されていることが前提ですけど笑
ご安全に!
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