化学プラントでは、油や燃料が頻繁に使用されます。これらの物質は、漏れや事故によって環境に重大な影響を与える可能性があります。こうしたリスクを軽減するために重要な役割を果たす油膜検知器について解説します。
油膜検知器とは
油膜検知器は、水面上にある油膜を検知するための装置です。油膜は、油が水に浮いた薄い層で、肉眼では見づらいこともあります。油膜検知器は、油と水の光学特性の違いを利用して、油膜を検知します。
油膜検知器の種類
油膜検知器には、さまざまな種類があります。以下に、代表的な種類とそれぞれの特徴を紹介します。
- 光学式油膜検知器
光学式油膜検知器は、油と水の反射率の違いを利用して油膜を検知します。光源から発せられた光が水面に照射され、油膜があると光の一部が吸収されます。この吸収光の量を測定することで、油膜の有無を判断します。
- レーザー式油膜検知器
レーザー式油膜検知器は、レーザー光を利用して油膜を検知します。レーザー光が水面に照射され、油膜があると光の一部が散乱されます。この散乱光の量を測定することで、油膜の有無を判断します。
- 静電容量式油膜検知器
静電容量式油膜検知器は、油膜の誘電率の違いを利用して油膜を検知します。水面に設置された電極と水面との間の静電容量を測定することで、油膜の有無を判断します。
油膜検知器の選定
- 検知精度
油膜検知器の精度によって、油膜の検知能力が決まります。検知したい油膜の厚さや種類に応じて、適切な精度を持つ油膜検知器を選択する必要があります。
- 設置場所
油膜検知器は、油膜が発生する場所に設置する必要があります。プラントの規模や形状、油の使用量などを考慮して、最適な設置場所を選ぶ必要があります。
油膜検知器のメリット
油膜検知器は、化学プラントにおける安全性を向上させるために重要な役割を果たします。油膜検知器を導入することで、以下のメリットを得ることができます。
- 油漏れ事故の防止
油膜検知器は、油漏れを早期に検知することで、油漏れ事故を防止することができます。油漏れ事故は、環境汚染や火災などの重大なリスクを引き起こす可能性があります。
- 環境への負荷軽減
油膜検知器は、油膜の流出を抑制することで、環境への負荷を軽減することができます。油膜は、水生生物に悪影響を与える可能性があります。
検知器の誤作動
上述のとおり、油膜検知器は環境トラブルを防ぐための重要な計器で、無くてはならないものなのですが、一方でデメリットもあります。それは検知器の誤作動です。
計器の性質上、油膜検知器が油膜を検知したら計器室でアラームが鳴ります。その時に運転員は現地を確認しに行き、本当に油膜なのか、異物による誤検知なのか判断するのですが、誤検知だということが結構あります。たまにある、程度ならいいのですが、頻発すると運転員はアラームが鳴っても無視するようになります。どうせ誤検知だから。そして、そのうち本当に油が流出した際に、アラームを無視していたがために初動が遅れるということもありえます。
まずは、誤検知の原因と対策について紹介します。
- 設置場所
油膜検知器は、波や風などの影響を受けやすい場所に設置すると、誤作動が発生しやすくなります。油膜検知器を設置する場所は、波や風などの影響を受けにくく、水位が変動しにくい場所を選ぶ必要があります。
- 検知設定
油膜検知器の検知設定が適切でない場合、誤作動が発生しやすくなります。油膜検知器の検知設定は、検知したい油膜の厚さや種類に合わせて調整する必要があります。
- メンテナンス不足
油膜検知器は、定期的にメンテナンスを行う必要があります。特に検知部のメンテナンス不足は、油膜検知器の精度低下や誤作動の原因となります。定期的に清掃やセンサーの交換等してください。
余談
たまに排水溝などで下の図のような油膜状のものを見かけます。実はこれは油膜ではなく、鉄バクテリアと呼ばれるものです。鉄バクテリアは、水溶性の二価の鉄イオンを酸化する際のエネルギーを得て生活しています。鉄バクテリアは土壌中に広く存在し、二価の鉄イオンを多量に含む地下水が湧出する場所で繁殖します。鉄バクテリアは繁殖に伴い水面に光沢のある酸化鉄の皮膜を形成して茶褐色の沈殿物を生成します。特に水の流れのないか少ない場所では、天た皮膜がその箇所に留まり、光で反射され油膜のように見え、目視では判別できません。
しかし、油膜かどうか判別できないとトラブルになりかねないので、簡単に判別できる方法を紹介します。
- 匂いを嗅ぐ
匂いを嗅いで、油の匂いやプラントで取り扱っている物質の匂いがしたらトラブルの原因になりえますので、関係者へ報告し発生源を断ちましょう。
- 触ってみる
油膜の場合は、触ると一度形は崩れますが、すぐに元通りになります。鉄バクテリアの場合は元には戻りません。
最後に
油膜検知器について解説しました。重要な計器なので適切な物を選定し、適当なタイミングで清掃やセンサーの交換等のメンテナンスをしてください。
ご安全に!
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