燃焼は、エネルギー源として広く利用されており、その形態は多岐にわたります。本記事では、拡散燃焼と予混合燃焼という2つの主要な燃焼形態について、詳細な比較を行います。記事の構成としては、項目ごとに拡散燃焼と予混合燃焼について記載し、記事の最後に表にまとめます。
1.燃焼メカニズム
拡散燃焼
拡散燃焼は、燃料と酸化剤が混合せずに供給され、燃焼面で混合しながら燃焼する形態です。具体的には、燃料ガスがノズルから噴出され、周囲の空気と拡散混合しながら燃焼します。噴出の速度が小さい時は層流で、この状態の火炎を層流拡散炎といいます。層流域では流速の増加にほぼ比例して火炎は長くなります。噴出速度が大きくなるにしたがって、不安定な過渡炎の状態を経て、乱れているが安定な乱流拡散炎の状態になります。乱流域では、火炎の長さは噴出速度に関係なく、ほぼ一定になります。これは、燃料ガスと周囲空気との混合速度は噴出速度にほぼ比例して大となり、燃料流量とほぼ相殺され、結局火炎の長さはほとんど変化しないものと考えられます。
予混合燃焼
予混合燃焼は、燃料と酸化剤を事前に混合してから燃焼させる形態です。混合気の調製方法は、キャブレター、インジェクションシステム、予混合器などによって行われます。燃料と酸化剤が均一に混合されているため、拡散燃焼よりも速く、効率的に燃焼することができます。
2.燃焼速度
.1 拡散燃焼
拡散燃焼の燃焼速度は、燃料と酸化剤の混合速度によって制限されます。混合速度は、拡散係数、乱流強度、燃焼面温度などの影響を受けます。一般的に、予混合燃焼よりも燃焼速度は遅くなります。
2.2 予混合燃焼
予混合燃焼の燃焼速度は、化学反応速度によって制限されます。燃料と酸化剤が均一に混合されているため、拡散燃焼よりも速く燃焼することができます。燃焼速度は、燃料の種類、混合気の濃度、燃焼温度などの影響を受けます。
3.燃焼効率
3.1 拡散燃焼
拡散燃焼は、燃料と酸化剤が完全には混合されていないため、燃焼効率・火炎温度が低くなる傾向があります。局部的に燃料が過剰または不足している状態が発生し、不完全燃焼や煤の生成につながります。
3.2 予混合燃焼
予混合燃焼は、燃料と酸化剤が均一に混合されているため、燃焼効率が高くなります。燃料と酸化剤の反応が促進され、不完全燃焼や煤の生成を抑制することができます。一方、燃焼効率が高いために燃焼温度が高くなり、NOの発生量は多くなる傾向にあります。
4.輝炎
燃焼に伴い、高温の燃焼ガス中の微粒子が光を発する現象を輝炎(明るい黄色または黄赤色に輝く炎)と呼びます。拡散炎では、酸化速度が空気の拡散に制限されるため、炎の温度も高くならず脱水素や凝縮などに有利です。また、燃焼速度が比較的遅い為に火炎の中に中間生成物が滞留する時間が長く、炭素が生成されやすい。拡散炎で輝炎が見られるのは以上の理由によります。一方、予混合燃焼では、燃料と酸化剤が事前に混合されているため、燃焼面が薄くなり、輝炎は発生しにくくなります。
5.逆火
逆火とは、火炎が燃料や酸化剤の供給方向とは逆方向に伝播する現象です。燃焼器の安定性を損ない、損傷や爆発などの事故につながる可能性があります。拡散燃焼よりも予混合燃焼の方が逆火が発生しやすい傾向があり、バーナーからの噴出速度が低い場合に起きます。
6.最後に
最後に、ここまでの内容を表にまとめます。記事の内容が少しでも役に立てば嬉しいです。
項目 | 拡散燃焼 | 予混合燃焼 | 詳細 |
---|---|---|---|
燃焼メカニズム | 燃料と酸化剤が混合せずに供給され、燃焼面で混合しながら燃焼 | 燃料と酸化剤を事前に混合してから燃焼 | |
燃焼速度 | 遅い | 速い | 拡散速度が影響 |
燃焼効率 | 低い | 高い | 燃料と酸化剤の混合度が影響 |
煤の生成 | 多い | 少ない | 燃料と酸化剤の混合度が影響 |
NOx排出量 | 少ない | 多い | 燃焼温度が影響 |
適用例 | ガスバーナー、ろうそく、ディーゼルエンジン | ガソリンエンジン、ガスタービン、ボイラー | |
輝炎 | 発生しやすい | 発生しにくい | 燃焼面が厚いか薄いかの影響 |
逆火発生 | 少ない | 多い | 燃焼速度や混合気の均質性などが影響 |
ご安全に!
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