ボイラーの水質管理において、適切な薬剤を適切な量使うことが重要です。ボイラー水の水質調整に使われるのは、主に脱酸素剤と清缶剤の2つです。この記事ではそれぞれについて紹介します。
脱酸素剤
ボイラー水中の酸素をボイラー系統内処理によって除去することを脱酸素といいます。脱酸素を行なうために用いられる薬品を、脱酸素剤といいます。
脱酸素剤には下記のものがあります。
[タンニン]
溶存酸素の還元作用があり、脱酸素剤として用いられますが、低圧ボイラーのスラッジ調整にも用いられます。
[亜硫酸ナトリウム]
脱気後に給水中に含まれている溶存酸素の除去に用いられます。1mg/Lの溶存酸素の除去に7.88 mg/Lの亜硫酸ナトリウムが必要ですが、余分に用いて反応を完全にし、余分に残るようにするのが一般的な用法です。
[ヒドラジン]
主に高圧ボイラーに使用され、反応生成物が窒素と水で、ボイラーの溶解性蒸気残留物濃度が上昇しない利点があります。溶存酸素1mg/Lの除去にヒドラジン1mg/Lが必要ですが、すばやく溶存酸素を除去するために100%過剰に注入します。過剰ヒドラジンはアンモニアと窒素に分解されますから、生成したアンモニアが復水中に多量に含まれると、銅系金属を腐食させます。
清缶剤
一般に、水に起因するスケールの付着、腐食、又はキャリーオーバーなどの障害を阻止するために給水又はボイラー水に添加する薬剤を清缶剤といいます。清缶剤をその作用によって分類すると以下のような種類があります。
・硬度成分の軟化
ボイラー水中の硬度成分を不溶性のスラッジに変えます。
・pH、酸消費量の軟化
pHおよび酸消費量の調整は防食上非常に重要です。酸消費量調整剤には、酸消費量を付与するものと、酸消費量の上昇を抑制するものがあります。酸消費量付与剤には水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムが、酸消費量上昇抑制剤としてリン酸ナトリウムやアンモニアが用いられます。
・スラッジの調整
ボイラー内で軟化して生じたスラッジが、伝熱面にスケールとして焼き付かないよう、沈殿物の結晶成長を防止します。
・脱酸素
上記で説明済みです。
以下に、清缶剤についてまとめた表を貼っておきます。試験でも業務でも非常に重要なので確実に押さえましょう!
また、ボイラー水の水質関係の記事を以下に張っておきますので、よかったら見てください。
余談
上記の清缶剤ですが、多くは薬剤メーカーがボイラーのタイプや設計に合わせて調合してくれたものを購入・使用したり、それらを複数購入して現場で調合して使います。実は、このとき注意しなくてはいけない事の1つが、ボイラー水中のナトリウムとリン酸濃度です。
ボイラー水のpHはざっくり10~11程度でふつうはコントロールされます。しかし、運転中は局所的にボイラー水が濃縮され、遊離アルカリ(主に水酸化ナトリウム)が生成することがあり、濃縮箇所はpHが14近くまで上がりボイラーチューブ外面が減肉させます。そのため、ボイラー水中のナトリウムとリン酸濃度が適切になるよう薬剤を選定する必要があります。
最後に
ボイラーのタイプや運転圧力に応じた、水質管理の指標はJISにまとめてありますので、詳しくはそちらで各指標をどの程度にすべきか確認、プロセスの材質を考慮して適切な薬剤を選定しましょう!
ご安全に!
コメント
コメント失礼します。
酸消費量付与剤には 水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムが、酸消費量上昇抑制剤としてリン酸ナトリウムやアンモニアとありますが、ボイラー一級の過去問にて「高圧のボイラーの酸消費量付与剤としては、水酸化ナトリウム、りん酸ナトリウム及びアンモニアが用いられる。」と記載がありました。
この問は正解なのですが、りん酸ナトリウムとアンモニアは付与剤と抑制剤兼用しているという事でしょうか?調べても分からなかったので質問させてもらいました。
返信が遅くなり申し訳ありません。
ご質問に回答いたします。リン酸ナトリウムとアンモニアは兼用、というより、水中でpH緩衝材として働きます。緩衝液として作用するpH領域と、ボイラーの運転条件を照らし合わせてみてください。
酸消費量付与/上昇抑制と言い方は色々ありますが、pHの調整剤だと思っておくとイメージがつきやすいのではないでしょうか。水酸化ナトリウムは緩衝作用はないので、酸消費量付与剤としてしか働きません。
実務では、水質調整用薬剤を購入することになると思いますが、各メーカーごとに成分や比率が異なり、各社のノウハウや知見が詰まっています。